若原副学長ブログ

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「大樹」

投稿日:2009年7月8日|カテゴリー:

 本年4月に、大学副学長に就任いたしました。以来、3ヶ月が経過いたしました。就任当初は、年度初めのこともあって、種々の案件処理や会議等が続いて、このブログを更新する暇もなく、こんにちに至ってしまいました。
 本館2階にある副学長室で執務をしておりますが、就任当初は、必要最低限の書類・文献・資料等を移転しただけで、室の壁には、鈴木前副学長よりお預かりしてある、「狩野亭吉」書の額が掛けてあっただけでした。そこで、自分の研究室にずっと掲げてあった、「額」を飾ることにいたしました。この額に入れてある色紙は、大学および大学院時代の指導教授であった恩師・板橋郁夫教授から、私が大学への就職が決まり、研究者・教員としてスタートすることになった折りに、はなむけにいただいたものです。
 その色紙には、「大樹」という字が書かれています。私が少し戯けて、これまで先生の庇護の下でご指導いただいたことへの感謝も込めて、「寄らば大樹の陰、ですね」と、申し上げましたところ、恩師はにっこり笑って、「そういうこともあるが、この『大樹』には、二つの意味を込めたんだよ、一つは、大樹のように、研究者・教員として大きく成長してほしい、という意味と、あと一つは、君、『大樹将軍』ということわざを知っているかね、これは、『後漢書』に出てくる故事に由来することばでね、」といって、中国、後漢時代の憑異(ひょうい)という将軍にまつわる故事を丁寧に教えてくださいました。この将軍は、他の将軍達が手柄話や自慢話をしているとき、一人静かに樹木の下に退いて功積を誇らず、謙虚な人柄であったため、他の武将や部下達からの信望が厚く、いつの間にか「大樹将軍」と称せられるようになった、「大樹」にはそういう意味もあるのだよ、君の人柄にふさわしいと思うから、と、温情溢れる激励をしてくださったのです。
 歳月は流れて、あれから早や何十年!!あのとき頂いた色紙は、額に入れて、ずっと研究室に掲げてきましたが、このたび、副学長室に掲げることにしたのです。恩師のお教えを実現することはなかなか難しく、「大樹」の色紙を眺めては自省自戒の日々を送っている次第です。しかし、なにかの目標あるいは目的をもって、日々精進することはとても大切なことだと、恩師のありがたさを痛感しております。   
 実は、この色紙についての話は、数年前、本学大学院法学研究科の学位授与式で学生さん達への「祝辞」のなかで、少し触れたことがあります。覚えてくれていて、研究室を訪ねてくれた際に、「あ!これがあの色紙ですね」などと、いってくれます。教師にとって、「教え子」(古くさい言い方かな)は、力と勇気を与えてくれる存在です。

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