速度のハナシ
10年ほど前のことでしょうか。「分数のできない大学生」というテーマが話題になりました。ある高名な私立文系学部の教授が、自分の所の学生が分数を解けないことに愕然としたところ、それを聞いた高名な国立文系学部の教授が、ウチも同じだ、と言い出して、その後は、我もわれもという感じで話が広がっていったのを覚えています。
編集子は、小学校の頃は割と算数が好きだったので、意味も分からず、分数というメカニカルな操作方法を面白いと感じて覚えた記憶があります。操作方法に慣れ親しんでから、ゆっくりと操作の意味を理解していった。そんな感じです。やがて、中学校に入り、「速度」の意味を学んで、速度計に書いてある km/h の意味を初めて知ったときの感動は、忘れられません。
速度というと、一定時間に移動した距離、と理解するのが普通ですよね。 km/h とあれば時速ですし、m/s とあれば秒速です。一定時間走らせて移動距離を測り、移動にかかった時間で移動距離を割れば、速度が出る。この速度は「走行」速度と呼ばれますが、歩いて移動すれば「歩行」速度となります。移動の方法にとらわれたくなければ、「移動」速度と呼んでも良い。移動というのはある地点から別の地点に位置が変化することですね。つまり、一定時間に、位置がどれだけ変化したか? これが「移動」速度です。
世の中には、変化するものが沢山あります。変化の大きさを測定し、その変化に要した時間で割ったら、あなたが関心を抱いた変化の速度を捉えることができます。ビジネスの世界では、売上という現象は、もっとも重要な変化現象です。少しその応用を考えて見ましょう。
午前11時から午後2時までの3時間でオニギリがどれだけ売れたか? これを時間で割ると「売上」速度が手に入ります。この場合の分子を、売上金額でなく売上数量にすれば、売上速度は、店舗内のオニギリの在庫減少速度に対応しますから、この数値と午前11時のときのオニギリの在庫数量を使って、オニギリの完売時刻を粗っぽく予測することができます。これが分かると欠品を防ぐための手立てをデータに基づいて早めに講じることができます。ここから「発注点管理」というテクニックの学びまで、あとわずかです。
あなたが面白い、と思う変化する現象は何ですか? それを速度に表して見ましょう。もしその速度の捉え方が、あなたの新発見のようなら、ぜひその速度に名前を付けてみてください。きっとその速度を使って、面白い経営分析ができることでしょう。