碁盤は狭い?広い?
囲碁は、碁盤の19本×19本の線の交点に黒石、白石を交互に置いていくゲームです。
囲碁のことばに シチョウ というのがあります。アタリ(もう一手で相手の石が取れる状態)をかけて相手が逃げ出してもさらにアタリをかけることができて、いつまでも相手の石はアタリから逃げられない状態をいいます。
ところが、シチョウの先に相手の石があると逃げられてしまいます。これを シチョウアタリ といいます。シチョウアタリが相手の石か味方の石かを常に読まなければならないのですが、この手順は、対角線のスミからスミまでだと30手以上になります。ずいぶん長いようですが、手順にはほとんど変化がないので、変化数としては 1 ということで、慣れれば初心者でも難しくはありません。つまり、この場合碁盤はそう広くはないということになるでしょう。
ところが、囲碁の序盤において19×19=361の着手点のどこに打つかということになると、その変化数はとても大きくなります。計算方法はいくつかあるようですが、囲碁の探査空間(着手可能な点×終局までの手数)は10の300乗に及ぶそうです。
大きな数をいうときよく引き合いに出される星の数ですが、宇宙空間における恒星の数は10の22乗と推定されています。比較して碁盤の探査空間はいかに広いかということになります。
したがって、序盤では「読んで」打つのはとうてい無理で、打ち手には、この先自分はどんな碁を展開したいかという「感覚」が重要になります。このためか囲碁には 「モヨウをひろげる」、「アツく打つ」、「カタチを良くする」など、あいまいさを含む表現がたくさんあります。囲碁の戦略といえるでしょうか。
この感じをつかむには相当な習練が必要で、初心者は碁盤の広さに初めは途方に暮れることになります。基礎的技法を十分に身に付け、実践を積み重ねるうちに戦略らしきものがみえはじめると、囲碁はさらに一層おもしろくなってくるはずです。
横山光伯教授 (経営学部) 記