ティーパーティーのこと|経済学部ブログ|名古屋経済大学

ティーパーティーのこと

さあ、ブログを書かなければならない。何を書こうか。わが同僚のように、囲碁、軍事、商船、さては貨車にまで関心を持っている人なら、いろいろ書くことがありそうだが、特にこれといった趣味・興味を持たないわたしにはあまり書く素材がない。そうだ、あのことを書こう。アメリカの中間選挙も終わってしまい、今となっては、全く賞味期限が過ぎ去ったことだが。

この夏、アメリカのワシントンに3週間ほど調査に行った。その場所はホワイト・ハウスから100メートルほど西にあり、広大なモールを見渡せるある政府機関だった。8月28日だったが、マーチン・ルーサー・キング師の有名なスピーチ(「私には夢がある」)47年を記念して、モールで集会があると聞き、そこへ出かけてみた。会場に近づくにつれ、続々と参加者がつめかけてくる。しかし、どうもおかしい。子供連れ、家族連れで続々とつめかけてくる人たちは、白人ばかりなのだ。

集会場で参加者に尋ねてみた。答えは「コンサバティブの集会です」だった。この答えでピーンときた。ティーパーティーの集会だったのだ。リンカーン・メモリアルでの演説者の声がはるかに聞こえるだけで、そこまで行こうとすれば人をかき分けて数百メートルはいかなければならないし、だいたい集会の趣旨に賛同しているわけではないので、そそくさと引揚げることとした。帰りにモールで猫とともに散歩中の人に尋ねてみた。やはり白人だったが、「わたしは違うんだが、ティーパーティーの集会です」、と。

ティーパーティー運動は、「非政治的」運動と自らを位置付けているようだが、それは恐らく違うだろう。同パーティーはオバマ政権の誕生後生まれ、オバマ政権の「過剰な政府の介入」「健康保険法のプログラム」に反対することをスローガンとして掲げているからだ。また、わたしの小さな経験からすれば、同パーティーは、公民権運動に対する挑戦という色彩を強く持っているように思えた。この集会にはキング師のスピーチ記念日と、同師の演説場所が(主催したベックという人はキング師が演説したところよりも段下のステップで演説し、そのことがまた賞賛されたという)わざわざ選ばれているからである。ティーパーティー運動は、今が絶頂期という意見があるが、はたしてどうなのだろうか。

野村重明